IEC2022日本語コミュニティを終えて【ケンウィルバー】

2021/06/26

今年のIECの日本語コミュニティも無事に終えることができました。

ご参加くださった皆様、ありがとうございます。

 

ケンウィルバーによる講演では、平和の実現のためには、インテグラルな段階へのシフトが必要だが、現代の時代の課題は、「私たち人類がグリーン段階に長くとどまってしまっていることである」という認識が印象的でした。

アンバーの時代からオレンジの時代へのシフトしていくことにより、戦争は減ってきたが、オレンジの時代では原爆や武器の破壊力が高まることで死者は増え、グリーンの時代に入ることで反戦活動が活発になり、人類はより平和に向かって進化してはいるもののインテグラルな時代に入るにはまだ機が熟していないという認識を示しています。

グリーン段階の課題は、「白人は黒人を差別しているという白人差別」や「男性は女性を差別をしているという男性差別」に対して無自覚なことなど、さまざまな例を挙げて、より自己の認識に対して意識的になるためのCleaning up(シャドウワーク)の必要性、Growing up(発達)の必要性、Waking up(目覚め)の必要性がありながらも、特に平和を実現していくには、Showing up(体現)の必要性として教育の重要性を説いていたのも印象的でした。現代の教育機関である大学では、いまだにグリーン段階の教育者が多く、統合的なものの見方を教えることのできるインテグラル段階の教師が増えることによって、社会に対しての変化をつけていける可能性を述べていました。

 

ケンウィルバーの講演の印象として、彼にとってはインテグラルな時代がもっと早く来るはずだという感覚があるのだということをあらためて知りました。日本ではようやくインテグラル理論に関する本が一部の人たちに読まれるようになった一方、アメリカではもう20年以上前から読まれてきたので、その感覚の違いというのは当然といえば当然ですが、たしかに教育機関である大学でインテグラルな段階の教育者が増えることは変化のレバレッジになるのかもしれない。

 

日本においては、その状況もまだ機が熟してはいないのではないかと私は考えます。

まずは統合的な段階のリーダーが組織や社会で少しずつ増えていき、彼らが実際に、現実の場面でより多くの複雑な課題解決に取り組み、さまざまな人の役に立つ実績を積んでいく必要があるでしょう。

 

私たちとしては、まずは成人発達理論が人に対してヒエラルキー的なランクづけをするものではなく、それぞれの人をよりよく理解し、思いやりを向けていくことだということを伝え続けていく必要があると考えています。

 

先ほどのケンウィルバーの論でも、たしかに彼の社会の構造を論じる際に、グリーンに限界があり、インテグラルな段階によって、その以前の段階の課題が克服できるという主張を書いてしまうと、グリーンの段階が悪いもので、インテグラルな段階が優れたものだという優劣の理論に伝わってしまうという誤解を生んでしまうという構造が存在していると思う。

 

私はエゴ発達理論のスザンヌクックグロイターやテリーオファロンの講座やトレーニングを受けていく中で、彼女たちの成人発達理論の研究や取り組みこそが、この誤解を解くために役立つと考えています。ケンウィルバーの関心は、人類の意識発達と、その課題を位置付けることであるので、どうしても現代の課題を、現代の発達段階の課題として論じるので、次の段階がよりよいものであるように聞こえてしまいがちであるのに対して、エゴ発達は実際のリーダーシップや人の現実で起こっている事象に対しての意味づけについてのパースペクティブ(視点)の違いとして説明しているために、現実的な人の認識に関する課題の整理に役立つだけでなく、その理論の展開や応用の仕方そのものがヒエラルキー的に誤解されないように整理され、本人たちのあり方にもそれが常に現れているからです。

 

そのためにも、まず自分自身の発言、立ち振る舞いを常に目撃し、自分自身のClean upに取り組んでいきたいと思っています。