トラウマサミット2022【ダンシーゲル】トラウマをどのように定義するか?

2022/07/18

セラピーとは統合を取り戻すこと

ダンシーゲルは、健康とは、最適な統合がされていることだと考えています。

統合というのはブレンドではなく、違いが違いとして認識され、つながりと区別が同時に存在することだとダンシーゲルは言っています。

トラウマとは、統合が失われ、違いがブレンドされてしまったり、つながりを失われてしまって断片化したりすることと言うことができます。

つまり、セラピーとは、統合を取り戻すこと、違いを見極めて、断片化してバラバラになったものに対して、つながりを取り戻すこと、ということもできると思います。

特に私たちは脳が統合されていないと、健康であるとは言えず、大脳新皮質と大脳辺縁系と脳幹の統合や脳梁による左脳と右脳の統合なども必要ですし、記憶の統合も必要です。
また、生理学的にはホルモンのコルチゾールや免疫機能や血圧やコレステロールを管理することも必要です。

内的家族システムなどのさまざまな自我の状態を統合する必要もあり、ポリヴェーガル理論などの神経学的な状態の統合も必要です。
人間関係や愛着の統合も必要だし、時間認識やアイデンティティを統合する必要もあります。

統合すべき領域は広大ですが、ダンシーゲルは端的にまとめてくれています。


 
ダンシーゲルは、健康な状態を、統合されている状態だと考え、統合されているとは自己組織的である状態だとし、自己組織的であるためには、つながりと区別が同時に存在できることで、創発が生まれる状態だと考えています。

ダンシーゲルは、心理学や精神医学の領域に、数学や複雑性科学のアプローチを分野横断的に用いて、新しい切り口でマインドやトラウマ、健康を再定義することで、これまで光の当たらなかった視点を私たちに提供してくれています。

健康や統合の領域を脳科学、生理学、神経学、心理学など、まさに「統合的」に示しながら、それらの統合した状態を破壊しているものがトラウマだと定義しています。

インテグラル理論でも、成長・発達とは「より高次のものに統合していくこと」と表現することがありますが、私たちは無意識になっていてる自己の側面を意識化して統合することで、発達していくと考えられています。

今回のダンシーゲルが示してくれたように、どんな分野・領域・カテゴリ・テーマにおいて、まだ統合が進んでいないのかについて、分野横断的に明らかにし、自分が統合しているところとしてないところをブレンドせずに、差異化することが、統合の第一歩と言えます。

そうすると、統合や発達とは、より健康になる、ということが言えるかもしれません。
より本来の健全な姿になること。

今回のサミットで学ぶことも、認知的に、今まで知らなかったトラウマについて、人の防衛メカニズムについて統合することになると思いますし、さまざまな専門分野の方と知見や情報を交換しながら統合し、実際の臨床現場で学んだことを実践、応用して統合していますね。

私たちの思考や感情や発想が制限されているのは、言葉の定義に対して、無自覚的、無意識的になってしまっている可能性があります。自分たちが当たり前に使っている言葉を意識することで、意識的に、自覚的になり、より自由な発想、自由な生き方、自由な社会を構築することができるかもしません。